2011.10(第126回) 畦ヶ丸
定例日の第三土曜日は荒天のため一日遅らせ日曜日の開催となった。長かった猛暑も終わり絶好の登山日和の季節となってきたが、秋の日暮れはつるべ落とし、遠い場所や行程の長い山歩きは選びにくい。今回は久しぶりに小田急沿線の山だ。少し遠めの畦ヶ丸は丹沢山地西部にある標高1293mの山である。
多摩センターを7時14分に出発し8時20分新松田駅に着いた。バスに揺られて1時間強、終点の西丹沢自然教室バス停で降りる。
そこには、山中湖の自宅から車で直接来た宇田川登さんが待っていた。上杉雅好さん・金子宏二さん・長張紘一合わせて4名。
西丹沢自然教室のガイドから登山者名簿の記入を求められ、9時40分登山開始となる。脇の道に入ると立派な吊り橋が架かっている。吊り橋を渡り支流に沿って緩やかに上って行く。川の流量は昨日の雨のせいか大変多く、所々に造られた堰から幅広く大量の水が滝のように音を立てて流れ落ちている。
何ヶ所かの堰は見上げるような高さがあり、僕らは堰の脇にある階段に導きられる。その堰によって上部の川床は上がり、平らな広がりが始まる。川に沿う道は右岸と左岸に何故か頻繁に変わり、その度に丸太で作られた橋を渡ることになる。先日の台風の影響で幾つかの橋は流され飛石渡りで進む。綺麗な流れではあるが、落ちたらずぶ濡れになる。やがて沢から離れ渓流の音は消えて辺は静かな山道となる。高度が増すに従い山の草花がちらほらと現われてきた。青い清楚なイワシャジンが山肌から垂れ下がり、黄色のアキノキリンソウの花も現われる。数株のミヤマシキミはどれも赤い実を一杯に付けている。
紅葉の季節には少しはやそうである。厚い雲がまだ残っているが、予報では午後から晴れ間が出るはずである。ここには鹿が多く金網で侵入を防いでいる箇所がある。猪や猿も多く、今朝のバスから丹沢湖周辺の道路で一匹のしゃがみこんでいる猿を見た。
上杉さんが小さな白い刷毛のような花を見つけた。全体は数センチのキッコウハグマでよく見ると辺り一面花をつけていた。多摩の丘陵では滅多に咲いた花は見られない。私は広い範囲で一斉に咲いた花を見るのは始めてであった。畦ヶ丸はアセビが多い丸い山に由来するらしい。比較的低い山で、ブナやスズタケに覆われ丹沢本来の自然が残っている静かな山と云われている。しかし、06年6月丹沢を訪れたとき山ビルに襲われ、以降夏の丹沢は避けていた。麓のガイドはこの辺には山ビルはいないが、宮沢湖辺りには11月でも発生していると忠告された。次回は袖平山の予定だが要再検討だ。
正午となり畦ヶ丸の手前の比較的周りの山並みが見える場所で昼食をとり早々に頂上を目指した。畦ヶ丸山頂も樹木が茂り真夏であれば眺望は全くきかない場所である。ここにも人はいなかった。人の少ない山である。
今日のコースは概ね樹木が茂り眺望は望めなかったが、下山中の一瞬ではあるが、霞を通して黒く浮かんでいる富士の姿が見られ、大室山も望むことができた。台風の影響は大滝沢の下山ルートで多くみられ、大木が根こそぎ倒れ込み根元の土砂を崩し、尾根や川岸を大きくえぐっている箇所に出会った。処理が追いつかないのか倒木は倒れたままで歩行の妨げになっている。生々しい倒木の下をしゃがみ込んで潜り込み、大きく跨ぎながら分け行って進行しようやくバス停に着いた。
宇田川さんは大滝橋付近に駐車している西丹沢自然教室方面のトンネルに消え、直にクラクションを鳴らしながら僕らの前を通過していった。残った3人は大滝橋でバスに乗る。往路と同じルートであるが、丹沢湖の施設に大きく迂回し、また御殿場線の駅に2ケ所寄り道するために1時間10分の道のりは大変長く感じた。新松田駅の脇にある小さな焼き鳥屋に入り生ビールで喉を潤した。 長張 記