第92回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の第92回例会が8月20日に開かれ、8人が参加して5句ずつ投句と選句を行なった。〈初めての道迷はぬか門火焚く〉は夫の新盆を迎えた妻の心情が溢れた句であり、やさしさを感じたなどと高得点句となった。また京都の嵯峨野、大原といった平家物語所縁の地を訪れたり苔寺こと西芳寺、さらには建仁寺の吟行句もあり句材が豊かな句会となった。
選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選句は◎で表記。
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新盆
初めての道迷はぬか門火焚く―――川俣あけみ(辻野◎、長張◎、宮地◎、 又木、松井)
処暑の風敗者勝者の去りゆきて―――川俣あけみ(又木◎、宮地)
手花火の消え入りさうな刻つなぐ―――松井秋尚(川俣◎、川面)
大原の苔むす墓域木下闇―――辻野多都子(川面◎)
苔の花辿れば京洛浄土かな―――辻野多都子(柴田◎)
空蝉を脱ぎ捨てる場所それぞれに―――長張紘一(松井◎)
地球てふ不思議なる星魂迎―――川俣あけみ(川面、又木、宮地)
夏おはり嫁に行くごと愛車去る―――長張紘一(柴田、辻野、宮地)
地平より空ある限り鰯雲―――柴田香代子(川俣、松井)
和音になり破調にもなり秋の蟬―――松井秋尚(柴田、長張)
川音の際立ちてをり夜の秋―――宮地麗子(川面、松井)
独り居の作り笑顔や夏果つる―――宮地麗子(柴田、辻野)
仏彫る木槌の音や白桔梗―――川俣あけみ(川面、又木)
茅の輪たつ嵯峨野の女の細面―――辻野多都子(長張)
黙祷をテレビに倣ふ原爆忌―――松井秋尚(又木)
足音に死にゆく蝉の飛び立ちぬ―――川面忠男(川俣)
今年また晴れて八月六日かな―――松井秋尚(川俣)
橋下を潜り行き交ふ夏燕―――長張紘一(柴田)
首筋をくすぐるような秋の風―――柴田香代子(松井)
三伏を大東京に籠り居て―――又木淳一(辻野)
片白草京の仏の池に満つ―――辻野多都子(川俣)
夏の雲時折り翳る書の頁―――川面忠男(辻野)
おはぎ買ふ作りし盆の遠かりき―――宮地麗子(長張)
椎の木の片蔭つづく果報かな―――又木淳一(長張)
盂蘭盆会この水の国木の国の―――川俣あけみ(宮地)
(文責・川面)