第95回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の月例句会が11月19日午後、多摩市の関戸公民館内で開かれた。毎月1回欠かさず実施してきて今回が第95回目の句会となった。
当月は〈妻の衣を干して介護の秋日和〉が最高得点句となった。高齢社会化が進み、老々介護が珍しくない世の中だ。介護はつらい作業だが、〈秋日和〉という季語が救いになっているというのが選句の理由だ。妻が夫を介護するケースが多いのであろうが、掲句は逆であるというところに俳味があると感じられたようだ。
99才で逝った作家で僧侶の瀬戸内寂聴さんを追悼する句も高得点を得た。寂聴さんの句集『ひとり』に所載されている〈生かされて今あふ幸や石蕗の花〉を踏まえた句だが、〈今が終はりぬ〉という措辞に新味が感じられたようだ。 選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)
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妻の衣を干して介護の秋日和―――辻野多都子(川面◎、又木◎、松井◎、川俣、宮地)
茶の花や結界示す石一つ―――川俣あけみ(柴田◎、長張◎、松井)
確かむる連山の名や空澄めり―――川面忠男(宮地◎、川俣、又木)
弔問の靴に寄り来る石蕗明り―――又木淳一(川俣◎、辻野)
端布出し袋など縫ふ夜長かな―――宮地麗子(辻野◎)
鴨の陣抜けて水脈引く一羽かな―――川俣あけみ(辻野、又木、松井、宮地)
寂聴の今が終はりぬ石蕗の花―――又木淳一(川面、川俣、柴田、松井)
朱印帳の乾くを待てり雪ぼたる―――川俣あけみ(川面、又木、宮地)
琴で弾くオーシャンゼリゼ文化の日―――又木淳一(川面、柴田)
湧水の昏きを囲む石蕗の花―――松井秋尚(又木、宮地)
古酒新酒名酒は何処衆院選―――又木淳一(柴田)
音寄する枯葉の下の朽ちベンチ―――辻野多都子(長張)
襟立てて遅延バス待つ冬はじめ―――柴田香代子(川俣)
身にしむや知らで撫でゐる古き傷―――宮地麗子(辻野)
花芒群れてこそ尚独りかな―――宮地麗子(辻野)
頼りなく日溜りに舞ふ冬の蝶―――柴田香代子(松井)
枯蓮に残る矜持や鴉舞ふ―――川俣あけみ(長張)
木の実踏む音揃ひたる四人かな―――宮地麗子(長張)
浅漬や奥歯に小気味よく響き―――松井秋尚(川面)
色鳥やゆらぐ水輪に色こぼす―――柴田香代子(長張)
水涸れの水琴窟の大柄杓―――川俣あけみ(柴田)
(文責・川面)