第97回俳句同好会
多摩稲門会・俳句同好会の97回目の句会が1月21日午後、多摩市の関戸公民館和室で開かれた。サークルとして発足し9年目の活動に入ったのだ。
当日はメンバー全員が〈眉月の風に研がるる寒の入〉という句を選んだ。しかもメンバーの半数が特選句にした。これは特筆に値する。寒々とした夜の三日月、身を刺すような風がいかにも〈寒の入〉を伝えている。作者は風花が舞った日の夜、雨戸を閉めようとしたところ細い月が残っており、風の鋭さもあって〈寒の入〉を実感したと自句解釈した。
例月は投句の半数以上が選に入るのだが、1月は18句と半数を下回った。選句が比較的ばらけなかったわけだが、それは特定の句に集中したせいであろう。特選となった句も4句にとどまった。
句会では選句とともに合評した。〈残されて寒月仰ぐ家路かな〉は、〈残されて〉に共感したとか、逆にそれが説明になっており、惜しまれるといった評もあり、自由闊達な感想を述べ合う句会になった。原句を推敲し直した句も少なくない。ちょっとした直しで句が生き生きとするのだ。これも句会の醍醐味である。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選は◎で表記。
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眉月の風に研がるる寒の入―――川俣あけみ(川面◎、長張◎、松井◎、又木◎、柴田、辻野、宮地)
初鏡硯の陸(をか)に映る顔―――川俣あけみ(柴田◎、川面、辻野、又木)
残されて寒月仰ぐ家路かな―――辻野多都子(宮地◎、川俣)
色紙書く筆の鋒荒る久女の忌―――川俣あけみ(辻野◎、又木)
氷面鏡ゆるびて富士を崩しけり―――柴田香代子(川俣、長張、宮地)
霜柱見ては子供の足となる―――松井秋尚(川面、川俣、辻野)
海浄め大地浄むる初日の出―――柴田香代子(松井、宮地)
通夜帰りひときは強き枯木星―――川俣あけみ(又木、松井)
道々の角々ごとの四方の春―――又木淳一(長張,宮地)
声上ぐる田の凍て鶴へ朝日かな―――柴田香代子(川俣、辻野)
冬の雷夫の墓前を二三足―――川俣あけみ(川面、松井)
かさこそと枯草跳ぬる雀かな―――川面忠男(柴田、長張)
寒卵ケージの密を想ひけり―――又木淳一(川俣、柴田)
青空のそのまま続き去年今年―――松井秀尚(川面)
生も死も包みラジオはクリスマス―――辻野多都子(長張)
初雪やビニール傘を回し行く―――川面忠男(松井)
初雪やふと口遊む童歌―――川面忠男(柴田)
猿之助の狐宙飛ぶ初芝居―――辻野多都子(又木)
(文責・川面)