第98回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の月例会が2月18日午後、多摩市関戸の公民館和室で開かれた。メール参加を含め8人が5句ずつ投句、選句したが、冬の季語、春の季語が入り混じったのが2月の句会の特徴と言える。暦の上では立春が過ぎたが、寒さが戻る日が多いという季節感の表れだ。
8人の選句を発表した後、出席者4人の合評となった。2人が特選とした〈ひと畝に萌黄吹き出づ春浅き〉は早春の景がすっと浮かぶ句と評された。高得点句となった〈老松を伐りて寂しき年始〉は、〈老松を伐りて〉という措辞と〈年始〉の取り合わせが新鮮であり、〈寂しき〉という感情表現もこの句の場合は生きていると鑑賞された。〈吹かれゐる山盛りの絵馬梅明かり〉の絵馬は、合格祈願だけでなく母の病が回復する奇跡を祈るのもあったと作者が自解した。
当日の句会が第98回目だが、2か月後の4月に第100回目を迎える。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)
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ひと畝に萌黄吹き出づ春浅き―――松井秋尚(長張◎、又木◎、川俣)
老松を伐りて寂しき年始―――辻野多都子(川俣◎、宮地、長張、柴田)
吹かれゐる山盛りの絵馬梅明かり―――川俣あけみ(松井◎、長張)
独り居の豆撒かぬ夜の幾度か―――宮地麗子(柴田◎、又木)
早咲きの花菜の風を吸ひにけり―――川面忠男(宮地◎)
この星に着地叶はぬ春の雪―――宮地麗子(川面◎)
走り根の走れる先や笹子鳴く―――川俣あけみ(川面、辻野、又木、松井、宮地)
寒紅梅塞げる胸の内に咲け―――宮地麗子(川俣、柴田、辻野、又木)
亡き人の吐息か梅の二三輪―――川俣あけみ(辻野、松井、宮地)
文字小さき古書肆(こしょし)の本や春寒し―――川俣あけみ(辻野、松井、宮地)
風抜ける道となりきる枯木立―――柴田香代子(川面、長張)
探梅や宝探しの子らと会う―――柴田香代子(川俣)
四肢伸ばし蒲団通して冬陽浴び―――長張紘一(辻野)
三寒と四温過ぐれば病癒ゆ―――柴田香代子(長張)
自転車のタイヤ押す指春隣―――又木淳一(川俣)
日を溜めて枝混み合へる濃紅梅―――松井秋尚(又木)
中尊寺雪の嵩抱く曲がり松―――辻野多都子(川面)
古民家に添ひ立つ梅の見映えよき―――川面忠男(柴田)
紅椿いざ鎌倉と馳せし道―――川俣あけみ(川面)
白銀の富士を真中に建国日―――又木淳一(松井)
水音のリズム戻りて寒明くる―――松井秋尚(柴田)
(文責・川面)