第110回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の第110回目となる月例会が2月17日、多摩市関戸の京王クラブで開かれ、7人のメンバー全員が出席した。実際の季節感はまだ冬だが、暦のうえでは春であり、投句された35句の中では立春をはじめ梅など春の季語の句が大半となった。
2人が特選とした句の季語は春燈。「余生のやうに点りゐる」という比喩が絶妙と評された。作者は明るく生きたいが、どこか物憂げであり、儚さを感じている気持ちを季語に託したようだ。
10日に多摩でも雪が降ったが、春の雪に驚きを託して詠んだ追悼句が特選となった。多摩稲門会が創立されて40年が過ぎたが、当初から活動に参加されていた女性の訃報の数日後の淡雪だった。句会後、寿司店で懇親会となったが、故人を偲ぶ席ともなった。
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選句結果は以下の通り。カッコ中は選句者名。◎は特選句。
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春燈や余生のやうに点りゐる―――川俣あけみ(川面◎、辻野◎、又木)
おでん種煮詰め煮詰めて独りかな―――辻野多都子(長張◎、川俣)
肩すぼめ足早の癖春浅し―――宮地麗子(松井◎、辻野)
春の雪想ひもかけぬ訃報かな―――川面忠男(宮地◎、長張)
白梅のどの木も古しニュータウン―――川面忠男(又木◎)
朝の日を碧く鏤めいぬふぐり―――松井秋尚(川面、辻野、長張、宮地)
立春の朝の蕾を確かむる―――宮地麗子(川面、又木、松井)
梅林の風荒ぶれる城址かな―――川俣あけみ(川面、松井)
潮騒や棚田の数の薄氷―――川俣あけみ(松井、宮地)
骨董市取りて戻して暖かし―――松井秋尚(川俣、長張)
朝寝して失せ物探す氷点下―――辻野多都子(川俣)
福寿草三年ぶりの友との輪―――川面忠男(川俣)
雲の端薄く溶かして寒明くる―――松井秋尚(宮地)
煮凝りや昨夜(よべ)の冷めたる残り物―――長張紘一(松井)
春(はる)北風(ならひ)魔物ひそむるやうな雲―――川俣あけみ(川面)
見得を切る赤き隈取春立てり―――又木淳一(辻野)
オカリナの新譜届くや春立てり―――宮地麗子(又木)
春夕焼飛鳥女人の薄ごろも―――川俣あけみ(辻野)
落語聞く高階の窓山笑ふ―――川面忠男(又木)
せせらぎの音を崩して春めける―――松井秋尚(宮地)
じゃんけんぽんあいこの続く余寒かな―――又木淳一(川俣)
曇り日や老い木の梅は白き波―――辻野多都子(長張)
(文責・川面)