第124回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の4月例会が19日午後、多摩市関戸の公民館和室で開かれ、8人が出席、5句ずつ投句と選句を行った。兼題は「風光る」と「蝶」。投句された40句のうち21句が選句されたが、高得点句は当季雑詠句の〈囀りや継ぐ者の無き家に座し〉、多摩市の現状を象徴する句と言えよう。ニュータウン開発から50年が過ぎ、当時の子育て世代は高齢化し、一人暮らしの独居世帯が増えている。多摩ニュータウンの再生が地域の課題であり、掲句はそうした社会問題を背景にした句だ。
〈スカイツリー見ゆる街角風光る〉はNHKの番組「新プロジェクトX」が18年ぶりに復活したことを踏まえた社会性のある俳句。初回は東京スカイツリーの難工事をこなした職人らの活動が紹介された。日本の国際社会における力が劣化しているが、かつてはそうではなかったという感慨を詠んだ句だ。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選句は◎で表記)。
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囀りや継ぐ者の無き家に座し―――川俣あけみ(川面◎、辻野◎、又木、宮地)
桐大樹枝先空へ風光る―――松井秋尚(白井◎、長張◎)
春愁や媚びることなき猫を呼ぶ―――川俣あけみ(宮地◎、川面、辻野)
蝶絡み風の隙間を上りけり―――松井秋尚(川俣◎、白井、長張)
スカイツリー見ゆる街角風光る―――川面忠男(松井◎)
落日へ舞ひあがりたる花のひら―――宮地麗子(又木◎)
吾の先へ先へと蝶の跳ね行けり―――松井秋尚(川俣、辻野、長張、又木、宮地)
黒々と幹浮き出でぬさくら雨―――辻野多都子(川俣、長張、又木)
マンホールの文字に降りたる桜しべ―――宮地麗子(川俣、辻野、松井)
台湾の台中・寶覺禅寺にて
仏像の満面の笑み風光る―――川面忠男(白井、宮地)
春暑し川舟見遣る芭蕉像―――川面忠男(辻野、又木)
納骨の花の一片伴ひて ―――又木淳一(川面、宮地)
堰に立つ鷺の子一羽風光る―――宮地麗子(白井)
校庭に球音高し風光る―――白井昭男(川俣)
風光る迎賓館の庭巡り―――長張紘一(川面)
蝶知るや北回帰線越へたるを―――宮地麗子(松井)
鳥帰る能登半島を目指しつつ―――又木淳一(川面)
盛り上がる土竜の住処風光る―――川俣あけみ(松井)
蝶を呼ぶ声聞き返す幼どち―――辻野多都子(松井)
初蝶の舞ふ待庵のにじり口―――川俣あけみ(長張)
新装の洗面台や黄水仙―――又木淳一(白井)
(文責・川面)