第125回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の125回目の句会が5月17日午後、多摩市の関戸公民館和室で開かれた。メンバーは8人だが、6人が出席し5句ずつ投句、2人が欠席したものの当句は託していた。兼題は「薄暑」と「葉桜」で夏の季語、投句された40句のうち22句が選に入った。
高得点句がなかった。また、どの特選句も選んだのは1人、とばらけた。一方、旅の景を詠んだ句が目立ったのも特徴だ。一例が兼題の薄暑を季語にして特選となった〈無人島の白き鳥居や薄暑光〉という句。薄暑は初夏の頃の暑さであり、もう寒さを感じなくなった船上から無人島の白い鳥居を見たのだ。昔は人が住み、心の拠りどころの神社もあったとわかる。時代とともに過疎化が進み、今は人がいなくなってしまったという島の歴史も連想させる。写生句だが、無常を感じさせる句になっている。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)。
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風五月文庫一冊ポケットに―――宮地麗子(又木◎、川俣)
濃く薄く新樹膨らみぬ嵐山―――辻野多都子(長張◎、又木)
葉桜をこすれる風の音軽き―――松井秋尚(宮地◎、長張)
無人島の白き鳥居や薄暑光―――川俣あけみ(川面◎、宮地)
面会や母の所望の夏帽子―――又木淳一(松井◎)
葉桜や玻璃に映れる腰伸ばす―――宮地麗子(川俣◎)
晴天の光あまねし茄子の苗―――辻野多都子(川面、川俣)
病院の窓は開けず祭笛―――川俣あけみ(松井、宮地)
密やかに色を沈めて花は葉に―――辻野多都子(長張、又木)
茶がゆ吹く京の朝餉や薄暑光―――辻野多都子(川面、又木)
青時雨血の色多き餓鬼草紙―――辻野多都子(又木)
山頂の蛇口ひねりし薄暑かな―――宮地麗子(川面)
葉桜の眩しく刻む空青き―――松井秋尚(川俣)
夏冨士を背にすれ違ふロープウェー―――川面忠男(松井)
川辺りの一筋の道薄暑光―――長張紘一(宮地)
名刺はや追加注文花は葉に―――又木淳一(川俣)
草刈るや香は宇宙へと溢れ出し―――宮地麗子(川面)
琵琶湖風枝垂葉桜揺れにけり―――白井昭男(長張)
夏立つ日友は黄泉路へ旅立てり―――川俣あけみ(宮地)
母の日や園児らの描く弾け顔―――川面忠男(松井)
懸命に風に向き合ふ鯉のぼり―――白井昭男(松井)
狛犬の顔に苔生え若葉風―――川面忠男(長張)
(文責・川面)