第128回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の128回目の句会が8月16日、多摩市関戸の公民館和室で開かれた。台風7号の接近で不要不急の外出を控えるように呼びかけられていたが、7人が出席し、いつもの通り5句ずつ投句と選句を行った。当日の兼題は「新涼」と「山椒の実」という秋の季語。暑い日が続いているが、暦のうえでは秋になっており、俳句は暦に従う。
投句のうち〈実山椒つめば椎葉の悲恋かな〉は難解句。宮崎の民謡「稗搗(ひえつき)節」を知らないとわからない。〽那須の大八 鶴登美捨ててヨ―ホイ 椎葉たつときゃ 目に涙ヨー♪という歌詞だ。大八は源氏の追手、鶴登美は平家の娘で2人は恋仲になるが、別れざるを得ない。椎葉は平家の隠れ里だ。その句の作者は〈実山椒ひえつき節の木の記憶〉という投句を選んでいる。稗搗節は〽庭の山椒の木♪と歌い出す。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)。
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秋風鈴胸の中にも風の道―――川俣あけみ(川面◎、辻野◎、宮地)
合掌の手を解きて摘む山椒の実―川俣あけみ(宮地◎、白井、辻野)
秋光の魚遡る速さかな―――宮地麗子(川俣◎、長張)
実山椒つめば椎葉の悲恋かな―――又木淳一(長張◎)
煮つむれば黒金(くろがね)の照り実山椒―――辻野多都子(又木◎)
涼新た谷戸の小径の緩き坂―――川面忠男(長張、又木、宮地)
新涼や網戸を抜くる明けの風―――長張紘一(川面、川俣)
終戦日知らぬ世代の法事かな―――長張紘一(白井、又木)
新涼や君はいつでもボブディラン―――又木淳一(辻野、宮地)
強ひられて死せる命や敗戦忌―――又木淳一(白井、宮地)
娘には此処が故郷赤とんぼ―――宮地麗子(川面、白井)
性格は変はらぬままや実山椒―――宮地麗子(川俣、長張)
青田風扇橋てふバス停に―――又木淳一(辻野)
ひぐらしに心洗はれ日も暮れぬ―――白井昭男(長張)
子の土産佞武多連れたる菓子包―――辻野多都子(川面)
八月に色ありとせば火焔(ほのほ)色―――川俣あけみ(川面)
日焼顔の甥姪の子ら初まみゆ―――長張紘一(白井)
定刻に始発のバスや涼新た―――宮地麗子(川俣)
青空に嵐近づく終戦日 ―――川面忠男(川俣)
新涼やエッフェル塔の聖火消ゆ―――川俣あけみ(又木)
飲み干せば涙のごときラムネ玉―――川俣あけみ(辻野)
実山椒ひえつき節の木の記憶―――川面忠男(又木)
(文責・川面)