第138回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の第138回目の句会は6月20日、メンバーが前回より1人増えて10人となった。当日の兼題は「黴」と「緑雨」。5句ずつ投句、合わせて50句の中から特選1句を含み5句ずつ選句した。以下の選句された句にある貌佳草は「かおよぐさ」と読み、芍薬のことだ。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)。
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体位変へ母の眼に緑雨かな―――澤本登代子(又木◎、辻野、富山、白井、宮地)
眼の手術決めし帰りの緑雨かな――川面忠男(澤本◎、又木、宮地)
茱萸つぶす憂きことありし日暮どき―富山珠恵(宮地◎、辻野、松井)
浅間嶺の黴の匂へる避難小屋―川俣あけみ(松井◎、川面、富山)
満員の車窓流るる四葩かな―――宮地麗子(富山◎、澤本)
書庫の端黴のままなる広辞苑―――松井秋尚(長張◎)
黴匂ふ本の扉に亡夫の文字―――澤本登代子(川俣◎)
ガザの子らを遊ばせたしよ大夏野―――川俣あけみ(川面◎)
ビル映す線路脇なる植田かな―――宮地麗子(川面、長張、松井)
底深きダム湖も緑雨鳶の声―――富山珠恵(川俣、白井、長張)
焼茄子や世捨人めくケア帽子―――辻野多都子(川俣、澤本、白井)
秘めやかに濃き翳揺るる緑雨かな―――辻野多都子(長張、松井)
さ迷へえば多摩の横山緑雨なる―――又木淳一(辻野、富山)
娘の部屋黴の納戸となりにけり―――長張紘一(松井、宮地)
夕暮れの白さるすべり黙の中―――富山珠恵(澤本、辻野)
開店のトトロの曲や梅雨晴間―――澤本登代子(川俣、又木)
老鶯や姿を見せぬ至仏山―――川俣あけみ(川面)
飛行機の着陸体勢麦の秋―――川俣あけみ(白井)
鈴蘭を句座に飾りし人いづこ―――川面忠男(澤本)
青黴の生へたる頭古枕―――辻野多都子(川俣)
「慈」と彫れる墓石を洗ふ緑雨かな―――川俣あけみ(又木)
迷ひ買ふ産直品の小さき枇杷―――澤本登代子(白井)
空梅雨や米はいつしかカタカナに―――又木淳一(川面)
借りしままの傘のかびの香主は無く―――宮地麗子(長張)
片陰に時短料理のレシピ聞く―――澤本登代子(辻野)
やはらかき緑雨も森の音となる―――松井秋尚(又木)
貌佳草内より膨れ紅溢る―――辻野多都子(富山)
桜の実含めば子等の取り巻いて―――又木淳一(宮地)
(文責・川面)