2009.09(第106回) 鹿倉山
鹿倉(ししくら)山は多摩川の上流の山梨県にあり「静寂の山」と云われている。今年の夏はハッキリしない夏であったが、その夏も終わり奥多摩の山々はこれからシーズンを迎える。
今日は、その奥多摩の更に奥にある鹿倉山を目指す。メンバーは、中川会長・川面さん・橋本さん・山岸さん・川俣さん・柴田さん・金子さん・長張の8名である。奥多摩駅前発9時半のバスに乗り山梨県丹波村役場前で下車。しばらく人影のない田舎の道を大丹波峠へと進んでゆく。満開のクサボタンが路際の土手の上から被さっている。歩いていなければ少し寒さを感じるハイキングも、山道に入るころになると丁度よく感じ、風も心地良くなってきた。マリコ橋も意識しないで渡ってしまった。セキヤノアキチョウジの群落を撮るため、山岸さんと私は先行部隊とかなり遅れてしまった。
11時半に広場のある大丹波峠。丹波と小菅を結ぶ要衝であった所だ。案内板に古墳との表示があった。確かに丸い土盛りがあり、これがそれかと皆で勝手にどんな人の墓なのか推理していた。
昼食は山頂でと、先を急ぐ。この一帯は、奥多摩の雰囲気とは少し違い、ゆったりとした傾斜地に右側は杉や檜の植林された森が続き、左側はコナラやモミジ等の自然の森が続いている。何故か地面には下草が少なく、その分広く感じ、独特の風景を作っている山だ。
途中、鳥やセミの鳴き声も無く、風の音や、街の車の騒音も届かない静かな山道が続き、まさに「静寂の山」と呼ばれる所以が納得できる。その間出合った2人連れと、籠を背負ったキノコ採りの男性1人で人の少ない静かな山であった。得に目立った急坂がなく、頂らしいピークを何ヶ所もやり過ごし、12時半頃、鹿倉山々頂に着いた。
山頂は、南西側が開け大菩薩連嶺から滝子山が望まれたがそれ以外は森で覆われ展望がない。ここに何故か太い幹の白樺が一本、開けた視界の前に立ちはだかっていた。
山頂は広いなだらかな小山のような場で、われわれ以外のメンバーはいない。皆、思い思いの場所で昼食をとることになった。
食事をとり暫く休んでいると体が冷えてきた。鹿倉山頂の下りも急坂はなく、訪れる人が少ないせいか、稜線の道は柔らかく微かな踏み跡を辿りながら、一列になって進んでゆく。川面さんの熊よけの鈴の音を、聞きながら、快適な稜線歩きを楽しむ。(先程のキノコ採りの人に熊にご用心と言われたが、勿論遭遇せず)
稜線の左右は丹波川と小菅川が沿っている。2つの川は、深山橋付近のダム湖で合流している。大寺山までの1時間40分の道は、豊富な自然木の間を蛇行しながら行進してゆく。赤松だけの明るい路も続くが、遠方の景色は樹木の陰で見えにくい。
大寺山の山頂には巨大な仏舎利塔がある。塔の周囲はあまり手が入っておらず、一面草で覆われており、捨てられた荒れた遺跡のようであった。大菩薩嶺からも望め、昨年湖から三頭山に登った道中にも右手に何時までも望む事ができた。川俣さんはその時以来の久しぶりの参加。尾根筋を散歩しているようなハイキングはここまでで、ダムに架かる深山橋まで急降下が続く。今までのんびり散歩気分で歩いていた後の、少し緊張する40分程の急降下であった。
深山橋を渡ったバス停から、3時21分発の奥多摩駅行きに乗車する。シルバー連休が始まったが、バスは往復とも割とすいていた。立川駅で下車し居酒屋「味工房」で、何時ものように山歩きの後の渇いた喉を潤し、会の記念誌のことなどに花が咲く一時だった。 長張 記