「防災に強くなろう」~転倒防止と災害時要援護者の救済
2012年07月09日
川面さんから発信されているニュースの一部を掲載いたします。
私が世話役の一人になっている小地域福祉活動グループ「福祉のネットワーク永山」は6月30日、多摩市社会福祉協議会の協力を得て「防災に強くなろう」セミナーを主催した。会場は小学校跡の建物で、多摩消防署に講演してもらった。東日本大震災では地域の震度は5だったが、首都圏直下型地震では震度6が予想されており、「いざその時」に住民はどう備えるべきか具体的に知ってもらおうというのがセミナーの趣旨である。 セミナーは多摩消防署の署員が講演し、その後で参加者がディスカッションするという形になった。講演内容は家具等の具体的な転倒防止の方法と災害弱者救済策であった。ディスカッションでは自治体、消防署、地域団体が災害時に連携して備える対策はできているのか、といったことが喫緊の課題とされたが、多摩市では今秋に災害時避難の具体策を打ち出すようだという情報が得られた。
講演1 転倒防止策
大地震が発生した場合、現在の建造物は耐震性が高いので、死傷者は倒壊した建物よりも転倒した家具類の下敷きになる例が多い。家具類の転倒防止策がぜひ必要になる。 転倒防止策としてはL型金具で家具類と壁を固定するのが最も効果的だ。しかし、家具を傷つけたくない、あるいは勝手に壁や天井にドリルで穴を開けられないといった集合住宅ではポール式が適当だ。ポール式は天上と家具の間にポール(細長い棒)を置いて家具を固定するが、ポールを天上や家具に直に当てるのではなくポールとの間に厚板を入れる。ポールと板が長方形の壁をつくり強度を増す。その際、家具類の手前下に滑り止めのマットを敷くと転倒防止の効果が高まる。 ビデオを映して震度6の揺れをナビゲーターの女性に体験させる場面を見せた。彼女は激しい揺れに「キャーッ!」と悲鳴を発し、後で「全く体を動かすことができませんでした」とコメントした。いざ地震が発生した場合、人々は何もできない。 人形を使って寝ている人が家具類の下敷きになる場面を映した。これが現実に起きたら悲惨だ。高さが1.8mの本棚は、本がいっぱい詰っていると200kgの重さになる。それが勢いよく倒れてきて、その下敷きになったら一溜まりもない。本棚は箪笥よりもダメージが大きい。 観音開きの家具類は、食器などが飛び出すおそれがある。これには地震が起きると自動的に扉を塞ぐ器具がある。食器棚などのガラス扉の破損で怪我をすることがあるが、これにはガラスの飛散を防止するフィルムを張るとよい。 家具を持たないのがいちばんの安全策で、寝室には家具類を置かないことだ。 家具類の下敷きになって助けを求めるのではなく、身の安全を保ち、むしろ近隣で助けを必要としている人たちの救済に当たってほしい。
講演2災害時要援護者の救済
多摩消防署は昨年度から災害時要援護者対策のモデル署になり、障害者グループやケアする人たちを対象に講演活動を続けるとともに災害時に援護を希望する人たちの登録を進めてきた。災害時要援護者台帳に高齢者、身体障害者、健康状態、生活環境などを記入してもらう。 要援護者の住居を地域の住宅地図に記しておけば、いざ地震発生という場合に要援護者がどこにいるかが一目瞭然になる。地図に記入する際、要援護が男性1人の家は○、女性は▲、男女2人は◎の印をつける。こうして「災害時要援護者マップ」ができる。 個人情報を保護しながら自治会と連携し、このマップを役立てる。多摩市には障害者が4,000人、75歳以上の人が6,000人いる。消防署員は150人、消防団員が200人、合わせて350人で、1万人を援けることはできないので、地域住民の協力が欠かせない。 これまでに8階に住む人で体重が150kgを超えた人を担架で運んだ事例がある。通常は4人で対処するが、狭い階段では2人にならざるを得ない。体重が100kgの人でも4、5階なら一気に下まで下ろせるが、高層階になると途中で休むといったことになる。 元気な近隣住民が手伝うとか地域の協力体制をつくりたいものだ。 また多摩消防署では災害時要援護者世帯を対象とした総合的な防火防災診断を実施している。本人の希望、同意を得たうえで消防署員が実際に住宅の状況を点検し、改善点を具体的にチェックする。
参加者ディスカッション
この日の参加者は、講演を聴いた後、2グループに分かれて地域の防災対策をめぐりディスカッションした。各地域の防災対策の現状を報告したり、要望が出たり、同じ永山地域でも事情が異なることがわかった。 永山6丁目は戸建ち住宅、集合住宅、企業、学生寮が混在している。共同で防災に取り組みたいが、一体にならないのが現状だ。企業で働く人たちは別の地域に住んでいるという理由もある。しかし、企業を外して地域の防災はできない。企業に呼びかけるが、応じてこない。消防署が間に入れば、企業も一緒に防災対策に取り組むのではないか、といった意見が出された。 自治会、住宅管理組合ごとには防災体制ができているが、地域を通じた連携策はあるのか、といった質問が出た。いざ地震が発生した場合、避難先の防災倉庫をどう利用するかといったルールづくりなどはまだ話し合われていない。 多摩消防署と多摩市はこの春、地域の防災対策を話し合ったが、多摩市ではこの秋を目標に地域の防災対策について具体的なものを打ち出すといった話が出た。 ディスカッションには女性の市会議員も参加し、地域の防災リーダーを育てることが必要だと強調していた。