第57回俳句同好会
2018年09月23日
第57回目となる「俳句同好会」の9月定例会は21日、8人が事前にメールで投句して多摩市の関戸公民館8階和室で選句、合評を行なった。特選句となった〈繙くは早稲田の歴史秋ともし〉は早稲田に無関係な他の結社の句会では点を得られないだろう。作者は稲門会のサークル「歴史に遊ぶ会」が過日に行った早稲田大学歴史館の見学に参加して揚句ができたと言うが、選句者も同じく歴史館見学に参加しており、体験を共有していることから選句したものだ。
俳句同好会のメンバーだった金子宏二さん(故人)は早稲田大学の元職員。10年前に多摩稲門会の文化フォーラムで早稲田の歴史について語ったが、揚句を特選とした一人は多摩稲門会の会報「杜の響き」に載った金子さんの講演要旨を読み直し揚句に共感したとも述べた。
選句された〈蛇の腕輪嵌めし華人とロシア旅〉には季語がない。俳句同好会は有季定型を原則としているが、原則には例外があり、選句者は句に詩情があれば選句の対象にしてもいいのではないかと問題を投げかけた。
選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選句は◎で表記。
繙くは早稲田の歴史秋ともし 又木淳一(川面◎、長張◎)
美濃紙に書ける命名涼新た 川俣あけみ(萩尾◎、又木◎)
川底に重機首振る夏薊 長張紘一(平松◎、川俣、辻野)
大花野鬱の日の身をただよはす 川俣あけみ(宮地◎、辻野、又木)
停電の秋夜の街に星降りぬ 川面忠男(川俣、長張、萩尾、平松)
秋蝉や遠く聞こゆる発車ベル 宮地麗子(川面、川俣、平松)
蛇の腕輪嵌めし華人とロシア旅 辻野多都子(川面、萩尾、宮地)
吹かれ来て溶岩にまぎれし秋の蝶 川俣あけみ(川面、辻野、又木)
どんぐりを踏む音ばかり小雨道 宮地麗子(川面、辻野、又木)
指標なき我人生の蝉時雨 辻野多都子(長張、萩尾)
帆柱の直ぐなる上の鰯雲 川面忠男(川俣、宮地)
言ひたくも胸につかへり吾亦紅 又木淳一(長張、平松)
あれやこれ妻の本音や鉦叩き 萩尾昇平(平松、宮地)
賄いの鰯の煮付けねだりけり 萩尾昇平(宮地)
重陽やシルバーパスを更新す 又木淳一(辻野)
強風を遣り過ごしたる柿の色 宮地麗子(長張)
この地球見切り時かや大厄日 萩尾昇平(又木)
持ちあぐる竿の重さよ野分あと 辻野多都子(川俣)
野も山も吹き飛ばす風蟻も飛ぶ 長張紘一(萩尾)
(文責・川面)