第89回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の5月例会が21日午後開かれ、メンバーの9人全員が出席した。
今回の特筆は、亡くなった姉のことを詠んだ連作が1席、2席、3席と上位を独占したことだ。今回が第89回目となったが、連作でこのようになったのは初めてだ。姉を思う気持ちがこもった連作であり、メンバーの多くに伝わったのだ。 他にも亡き夫を悼む気持ちで四国遍路をして詠んだ句が選に入った。メンバーは高齢者が大半で愛別離苦に堪えざるを得ない人生のステージに立たされている。俳句は、日々明け暮れの詩であり、縁者を偲ぶ句には共感するのだ。 選句結果は以下の通り。(カッコ内は選句者名、特選句は◎で表記)
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薫風を着物に包み納棺す―川俣あけみ(柴田◎、松井◎、宮地◎、川面、辻野、又木)
葬列や雨に揺らげる山法師 ― 川俣あけみ(近沢◎、川面、辻野、又木)
青嵐命終近き姉の許(がり)― 川俣あけみ(又木◎、近沢、辻野)
朝の日を揃へて弾く山法師― 松井秋尚(辻野◎、川俣、長張)
青嶺出で青嶺に消えぬ山頭火― 辻野多都子(川面◎、又木)
呟きてなんじやもんじやの呪文めく― 松井秋尚(長張◎)
一幅の余白に夏の来たりけり ― 川俣あけみ(辻野、又木、松井、宮地)
喪心を杖に預けてバス遍路― 辻野多都子(川面、川俣、宮地)
往くあての無き日や独り春惜しむ― 宮地麗子(柴田、長張)
一匹の蜘蛛にたぢたぢ独りの餉― 川俣あけみ(松井、宮地)
大欅全身余すなく若葉 ― 松井秋尚(川俣、近沢)
不要不急論語読み解く五月かな― 又木淳一(川面、松井)
夏めくや風にのりくる木の香り― 柴田香代子(松井)
したたかにはじけ飛び来し木の実植う― 近沢市子(柴田香代子)
静寂な森や小啄木鳥の叩く音 —長張紘一(川俣)
四時間のおしん特集昭和の日 ―又木淳一(柴田)
剪定し透きたる畑の生気かな― 近沢市子(長張)
若竹や会へぬ間に孫伸び来たる —柴田香代子(近沢)
若葉風ノツクの飛球追ふ子らへ ― 川面忠男(川俣)
葉桜や友の忘れし杖の照り ―辻野多都子(長張)
先細る人の一生山笑ふ ―長張紘一(柴田)
えごの花二筋真つ直ぐ引いて落つ― 松井秋尚(近沢)
城山の巻き道急ぐ竹落葉 ―川面忠男(川俣)
(文責・川面)