第93回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」は9月17日午後、多摩市の関戸公民館の和室で第93回目となる定例句会を開き、8人が5句ずつ投句と選句を行なった。40句のうち6句が特選句となったが、その1句の〈元寇の武者は十九や青葉影〉は長崎県の壱岐を訪れた旅で詠んだ句ならではの力強さがあると鑑賞された。まだ若い身空で国難に殉じた若者を詠んだ句だが、〈青葉影〉という季語が効いているという評だ。現地には若者の銅像が立っているという。蒙古襲来を想起する句であり、現代の中国の脅威と重ね合わせると奥の深い句となる。ともかく格調のある句だ。
選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選は◎で表記。
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遺句集の生くる言葉の沁む身かな―― 川面忠男(柴田◎、又木◎、宮地)
秋澄みて小藪隠れの水の音 ―柴田香代子(川面◎、川俣、辻野)
高幡不動尊
敗荷や眼差し曇る美男像―― 川面忠男(長張◎、辻野)
翼あらば帰燕追ひかけ南溟へ―― 川俣あけみ(宮地◎、柴田)
だしぬけに彼岸花立つ不動尊―― 辻野多都子(松井◎、長張)
壱岐
元寇の武者は十九や青葉影―― 辻野多都子(川俣◎)
木々の音風に乾きて鰯雲―― 松井秋尚(川面、川俣、辻野、宮地)
草引きて膕(ひかがみ)洗ふ朝湯かな―― 辻野多都子(川面、川俣、又木)
吹かれきて溺るるもよし稲穂波―― 川俣あけみ(柴田、長張、松井)
鬼の子に心弱りを見透かさる―― 川俣あけみ(柴田、松井、宮地)
悠久の煤けたる梁秋の寺―― 長張紘一(川俣、松井)
杭のごと鷺立つ秋の川辺かな―― 宮地麗子(柴田、長張)
せいいつぱい今日を限りの残暑かな―― 宮地麗子(又木)
団十郎の朝顔渋き夜明かな―― 辻野多都子(松井)
毅然たる姿勢崩さぬ桔梗かな―― 松井秋尚(長張)
昼の虫小雨の草に幽かなる―― 川面忠男(辻野)
梨を剝く音小気味よくざらめきて―― 松井秋尚(又木)
警世の書を読み耽る夜長かな―― 川面忠男(又木)
琵琶をもて朗朗と天に南洲忌―― 又木淳一(川面)
会ひたき絵秋の小さき美術館―― 松井秋尚(辻野)
稲苅田ひかり真直ぐ差しきたり―― 川俣あけみ(宮地)
秋蟬の声聞き分ける法の山―― 松井秋尚(川面)
(文責・川面)