第104回俳句同好会
俳句の日という8月19日、多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の第104回目の句会が関戸公民館の学習室で開かれた。同日はお盆明けとあって御霊を送る俳句が投句されたのが例月と違った特徴だ。〈送り火の尽きて残れる地のほてり〉、〈五人乗する脚を太めに茄子の馬〉、どちらも特選句となった。
また8月15日の直後ということもあり、終戦日を季語にした〈吾が喜寿は令和四年の終戦日〉も当日の高得点句となった。戦後77年が過ぎた今年に77歳の誕生日を迎えた個人の感慨だ。メンバ-には同年齢の人もいて共感したようだ。終戦の年に生まれ、先の戦争を知らず、戦後の復興、高度成長時代に生きた世代だが、ウクライナ戦争が続き、中国が示唆する台湾制圧には日本も巻き込まれ怖れがある今日だけに実感が伝わる。終戦日という季語が効き、個人の感慨を超えて広がりのある句になっている。〈暑気払ひ戦の星を憂ひつつ〉も不戦を祈る句だ。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選は◎で表記。
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送り火の尽きて残れる地のほてり―――川俣あけみ(又木◎、松井、宮地、辻野)
吾が喜寿は令和四年の終戦日―――又木淳一(川面◎、川俣、松井)
五人乗する脚を太めに茄子の馬―――川俣あけみ(宮地◎)
四十雀独りよがりの鳥語かな―――長張紘一(松井◎)
仰向けのひとつに降れる蝉時雨―――川面忠男(長張◎)
喪服脱ぎ檸檬一片口中に―――川俣あけみ(川面、辻野、宮地)
なぜ此にただ夕蝉の一人部屋―――又木淳一(川面、辻野)
風来たる奥の社の片かげり―――宮地麗子(川俣、長張)
茄子焼いて夫在りし昼思ひける―――辻野多都子(松井、宮地)
朝日差す無人スタンド秋茄子―――川俣あけみ(長張、又木)
刈られたる吐息ぞ強き草いきれ―――宮地麗子(川面、長張)
救急車去りて沸き立つ蝉しぐれ―――辻野多都子(川面、松井)
秋立つや雲みな鳥のかたちして―――宮地麗子(辻野、又木)
送り梅雨ぬるりと触るる柱かな―――辻野多都子(宮地)
暑気払ひ戦の星を憂ひつつ―――川面忠男(川俣)
里山をやには響もす草刈り機―――長張紘一(辻野)
片蔭の噂話の尾鰭かな ―――川俣あけみ(又木)
雑音に聞こえてきたる蟬時雨―――松井秋尚(長張)
秋暑し鍵まだ開かぬ会議室―――松井秋尚(又木)
秋立つや家居の庭に風一陣―――又木淳一(川俣)
煌めいて群がる蜻蛉田水満つ―――長張紘一(川俣)
(文責・川面)