第105回俳句同好会
多摩稲門会の「俳句同好会」の9月例会は16日午後開かれ、メールにより投句、選句した人を含め7人が参加した。サークルとして月に一度の開催だが、活動を開始してから休むことなく続き9月が第105回目となった。 投句、選句とも5句ずつだが、投句された35句のうち半数以上の20句が選に入った。当日の最高点句は〈宿坊の朝の緊りや新豆腐〉で〈緊り〉には「しまり」とルビが振ってある。大きな寺に泊まった朝の引き緊まった雰囲気が伝わる。寺は朝から勤行をし、僧の読経が響いていたのだろう。朝食は肉や魚ではなく豆腐、新しく収穫した大豆が原料だ。清涼感もある秋の句だ。 1人が特選句としたものの意味がよくわからないと評されたのが〈啄木よ我は野に寝て天の川〉。これは石川啄木の〈不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心〉という短歌を踏まえての句だ。野に寝て天の川を見たのは多摩稲門会の「こそばの会」というサークルの活動で新潟県の妙高高原に出かけた際のことだった。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選は◎で表記。
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宿坊の朝の緊りや新豆腐―――川俣あけみ(川面◎、又木◎、辻野、宮地)
山荘の魚籠に挿さるる紅葉の枝―――川俣あけみ(長張◎、松井◎、川面)
芒原匿はれたるおもひ草―――辻野多都子(川俣◎、長張、宮地)
ゆきあひの雲流れきて篠薄―――辻野多都子(宮地◎、又木)
啄木よ我は野に寝て天の川―――川面忠男(辻野◎)
酔芙蓉町内の人皆老いて―――川俣あけみ(川面、又木、松井)
翡翠色のどんぐり拾ふ下山道―――宮地麗子(川俣、長張)
初秋刀魚戦火の民に詫びながら―――辻野多都子(川俣、又木)
白芙蓉素てふ熟語の二つ三つ―――又木淳一(辻野、宮地)
山頂は絹の雨なり葛の花―――宮地麗子(川俣、松井)
雨音をリズムに真夜の秋思かな―――川面忠男(川俣、松井)
はつとする色に露草抜け出でて―――松井秋尚(長張)
八月を少し残して新学期―――又木淳一(松井)
白と黄と縺れ高きへ秋の蝶―――松井秋尚(又木)
つぎつぎと生ゆる愛妹花芙蓉―――又木淳一(辻野)
濁音の声引き摺つてちちろ虫―――松井秋尚(辻野)
温暖化進む我が星雁渡し―――川俣あけみ(宮地)
雨多き庭にひときわ女郎花―――辻野多都子(長張)
萩のもと盗人萩も咲き誇る―――長張紘一(川面)
同胞の妹は彼方に秋彼岸―――又木淳一(川面)
(文責・川面)