第106回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」は10月の例会が第106回目、メンバーの7人が参加した。当月の高得点句は、氷河地形の千畳敷きカールを訪れた旅で詠んだ作品だ。〈向き長さ不揃ひの稲架峡の風〉は旅の途中の景、〈銀河愛づ氷河の跡に寝転びて〉は千畳敷カールに敷物を持参、実際に寝転んで澄んだ星空を見上げた際の感動を詠んだ。千畳敷カールは長野県駒ヶ根市にあり、ロープウエーで上がる。木曾駒ケ岳に登るルートでもある。
多摩稲門会の別サークル「イネの会」は10月初め中部国立公園の上高地、奥飛騨温泉に旅をしたが、「俳句同好会」のメンバーのうち3人が参加した。その旅で詠んだ俳句は〈戦なき山河よ梓川澄めり〉、〈山頂のポストぽつりと霧の中〉など3句が選に入った。その山頂は、新穂高温泉駅からロープウエーで上がった標高2千メートルの高さにある。晴れていれば穂高連峰や槍ヶ岳を眺望できるが、当日は霧に隠れ、展望台に立つ郵便ボストを見ただけだった。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名、特選は◎で表記。
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向き長さ不揃ひの稲架峡の風――― 川俣あけみ(松井◎、宮地◎、長張)
銀河愛づ氷河の跡に寝転びて――― 川俣あけみ(辻野◎、又木、宮地)
漱石と子規の青春秋袷――― 辻野多都子(川面◎、川俣)
電話終ふ何時しか雨の夜寒かな――― 宮地麗子(又木◎、川面)
千の風一つ一つに秋茜 ―――又木淳一(長張◎)
大花野去りたる人に会へさうな――― 川俣あけみ(川面,辻野、又木、宮地)
廃屋を隙なく包む葛の花 ―――長張紘一(松井、宮地)
径ふさぐ水引の花歩に分けて――― 松井秋尚(辻野、長張)
戦なき山河よ梓川澄めり――― 川面忠男(長張、又木)
秋草の中へ膝まで歩を沈め――― 松井秋尚(川俣、辻野)
冷やかに立てる高札奈良井宿――― 川俣あけみ(長張、松井)
鉦叩たたきて止みぬ道後の湯――― 辻野多都子(川俣)
秋の雲散らしたるまま池閑か――― 松井秋尚(川俣)
山頂のポストぽつりと霧の中――― 宮地麗子(川面)
老の眼に白萩やさし風の道――― 辻野多都子(松井)
神木の根元ほのかに赤まんま――― 宮地麗子(松井)
秋彼岸母のおはぎを懐かしむ――― 辻野多都子(川面)
遅足の多摩の横山爽やかに――― 又木淳一(川俣)
秋風を連れて公園までのバス――― 松井秋尚(宮地)
爽涼や写真撮り合ふ河童橋――― 川面忠男(又木)
妖怪にただなりたくてハロウィーン ―――又木淳一(辻野)
(文責・川面)