第109回俳句同好会
多摩稲門会の「俳句同好会」の1月例会が多摩市関戸の公民館和室で開かれ、メンバー7人が出席した。当日が第109回目、サークル活動として10年目に入ったことになる。世話人の長張さんがそのことを伝えると、メンバーの間から「よく続いた」という感慨の声が洩れた。
当日の高得点句は〈冴ゆる夜や外湯巡りの下駄の音〉という句。作者が選句された後、城崎温泉でのことと説明した。志賀直哉の小品「城の崎にて」が俳句作りにも役立つと話題になった。 当日は京都の四条河原に立つ阿国の像、銀座の地下の能楽堂を詠んだ句もあり、読者の想像を広げるという意味で余白の広い句も目についた。
また〈新しき歳時記並べ冬の陣〉は、現在の俳句作りにかける心意気を歳時記に託した句だが、合評で夏の陣にかけて頑張ろうと共感が広がった。
・
選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選句は◎で表記)
・
冴ゆる夜や外湯巡りの下駄の音―――川俣あけみ(長張◎、宮地◎、川面、又木、松井)
冬麗や此処に流れ来此処に果つ―――宮地麗子(川俣◎、辻野)
寄鍋の果てに投げ込む女の気―――川俣あけみ(辻野◎、長張)
漱石忌銀座の地下の能舞台―――辻野多都子(川面◎)
京都南座顔見世興行
世に古し阿国の像も年の暮―――辻野多都子(又木◎)
宅配の大根故郷の土を付け―――川面忠男(松井◎)
大楠の息吹に触るる初詣―――宮地麗子(川面、川俣、長張、又木)
青空にほど良き数の寒紅梅―――松井秋尚(川面,宮地)
寒晴や二人で覗く恋みくじ―――松井秋尚(川俣、長張)
着膨れて孤高の詩人にはなれず―――松井秋尚(辻野、又木)
新しき歳時記並べ冬の陣―――辻野多都子(川俣、宮地)
恙なく漫然と過ぐ歳の暮れ―――長張紘一(辻野、宮地)
永らへて凪の海あり初の旅―――宮地麗子(又木、松井)
人気なき坂の下りに冬桜―――川面忠男(松井)
寒紅濃く引いてくぐれり羅漢寺―――川俣あけみ(辻野)
裸木や裳抜けの殻の巣を抱く―――長張紘一(松井)
一枚の葉さへ残さぬ枯木かな―――宮地麗子(川面)
初刷の数独パズル早暮るる―――川俣あけみ(宮地)
好天も続くも至福三が日―――長張紘一(川俣)
膝の子の髪の香れり初絵本―――又木淳一(長張)
(文責・川面)