第112回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の月例会が4月21日、多摩市・関戸公民館和室で開かれ、予め5句ずつ投句していたメンバーの全員、7人が出席し選句と合評を行った。投句数は35句、ほぼ半数の18句が選句されたが、そのまた半数はメンバー3人が北海道から九州まで旅をした際に詠んだ句だった。
北海道の旅では牧場を見学した際の嘱目句、〈春の雲名馬を生みし引退馬〉、〈遅き春動かぬままの老牝馬(ろうひんば)〉が話題になった。名馬は数々のレースで優勝したサラブレッドのディープインパクトのことだ。ディープインパクトは亡くなったが、母馬は生きていて人間で言えば90歳に相当するという。もう生きる力が弱まり身動きもしないが、北海道の寒さを乗り越えて何とか春を迎えた。その生命力を詠んだ句だ。
〈北の地の風車の列や風光る〉、〈芽吹嶺の風車が回す未来かな〉も北海道で詠んだ句だが、後句の「未来」は原発に変わるエネルギーという意味だ。作者の自解を聞き句の深さを感じた。これも句座ならではのことだ。
選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)。
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別府
海地獄さくら吹雪を飲み込める―――川俣あけみ(川面◎、辻野◎、長張◎)
有珠山の力吾に欲し春愁―――川俣あけみ(宮地◎、川面、辻野、又木)
老桜余力を残す八分咲き―――長張紘一(松井◎、宮地)
いつしかに咲く数越ゆる落椿―――松井秋尚(又木◎、宮地)
袴着の卒業生や花筏―――辻野多都子(川俣◎)
春の雲名馬を生みし引退馬―――川俣あけみ(長張、又木、宮地)
芽吹嶺の風車が回す未来かな―――川俣あけみ(辻野、又木、宮地)
追悼文読み書く日々や紫木蓮―――辻野多都子(川俣、又木、松井)
札幌
時計塔に明治の覇気や木の芽晴―――川俣あけみ(辻野、長張、松井)
北の地の風車の列や風光る―――宮地麗子(川面、川俣)
時計台の歯車の音日永し―――宮地麗子(川面、松井)
ゆつくりと進む蝌蚪の尾忙しなく―――松井秋尚(長張)
残雪の遠山映す運河かな―――宮地麗子(川面)
玄関を出でたる一歩風光る―――松井秋尚(川俣)
遅き春動かぬままの老牝馬―――宮地麗子(辻野)
点々と丘に辛夷の翳白き―――長張紘一(松井)
空広げ胸に溢るる辛夷かな―――辻野多都子(長張)
マスク取り万朶の花を浴びゐたり―――又木淳一(川俣)
(文責・川面)