2024年早稲田大学校友会 東京三多摩支部大会報告
2024年早稲田大学校友会の東京三多摩支部大会が8月31日午後1時から多摩市・多摩センターのリンクフォレストで多摩稲門会、稲城稲門会の主幹により開催された。大会は四部から成り、第一部が式典、第二部が田中愛治早稲田大学総長の講演、第三部が学生たちのコンサート、第四部が懇親会で五時半に閉会した。
第一部 式典
東京三多摩支部副事務局長である堤 香苗さんの司会により始まり、三多摩支部支部長である尾ノ井光昭多摩稲門会会長が壇上に上り挨拶した。冒頭、支部大会を開催できるか台風10号の影響が懸念されたが、開催できたのは同慶の至りといった趣旨を述べ、続いて東京三多摩支部の活動について説明した。以下はその要約だ。
記録によると、東京三多摩支部は1979年に発足し、現在では26支部に拡大している。東京23区支部とともに首都圏校友会の一翼を担っている。支部活動の目的は三つある。一つは各稲門会の交流・親睦だ。二つ目が早稲田大学の事業に対する支援、そして三つ目が地域社会への貢献だ。
喫緊の課題がある。卒業生の高齢化が止まらず、三多摩支部においても校友会員が減少、各稲門会がそれぞれ知恵を絞って会員確保に努めている。着実に成果を出している稲門会もある。多摩稲門会も10年前には180名近い会員がいたが、現在は120人に減ってしまった。これを座して見ていることはできない。幸い組織強化補助金及び地域稲門会費をいただき、これを原資として積極的に増強活動をしている。
さらに尾ノ井支部長は、パリオリンピックの早大関係選手の活躍に触れ、田中総長の目標の成果に期待すると述べた後、同大会に出席した方々に感謝して挨拶を終えた。
その後、堤支部副事務局長が同日の来賓を紹介した。田中総長、早稲田大学校友会常任幹事の松尾亜弓さん、稲門祭実行委員会企画広報本部長の石塚順子さん、東京都23区支部長の吉田誠男さんの三人。そして当日は東京三多摩支部稲門会から150名以上が参加していると報告した。
続いて東京三多摩支部事務局長の長張紘一さんが2024年度の活動について予定を含め次のように報告した。「東京三多摩支部会長会(定時総会)の開催(7月14日)、「東京三多摩支部大会の開催(8月31日)」、「サロン・ド・三多摩の出店に対する支援と協力」、「東京23区の主幹で23区支部と東京三多摩支部合同会長懇話会を開催(12月8日)」、「支部活動の強化と円滑化を図るための情報交換などを目的に月に1回の頻度で事務局連絡会議等を開催」。「次期支部大会の主幹は東大和、武蔵村山、東村山、あきる野4稲門会」。
第二部 田中愛治総長の講演
三多摩支部大会の第二部は午後1時半から田中愛治早稲田大学総長が講演を行った。演題は、「世界人類に貢献する人材を育てる早稲田~創立150周年記念事業への道筋」。以下はその要約だ。
早稲田大学は2032年に創立150周年を迎えるが、それまでのことは考えなくていい。150周年までのことはすでに考えられていたからで我々はそれより先、さらに2050年以降に早稲田がどういう大学になるかを考えなくてはならない。総長選挙の時から掲げた「世界に輝く早稲田」という目標は目指す。それには大隈侯の建学の精神に立ち戻る。
まず学問の独立。これを現代風に考えれば「研究の早稲田」となる。学問の活用は「教育の早稲田」、それから「貢献の早稲田」だ。大隈侯の「一身一家一国のためのみならず進んで世界に貢献する抱負がなくてはならない」という言葉から貢献の早稲田となる。早稲田は、自分のこととか自分の家とか自分の国のこととかだけ考えるのではなく世界に貢献する人材を育てろと言っている。150周年以降の大学を考えるに当たり世界人類に貢献することを考えなければ何事も始まらない。
教育は10年前からグローバルエデュケーションセンターがあり、どの学部の学生も履修できる科目を用意している。また様々な研究をまとめてマネジメントできるセンターとしてグローバルリサーチセンター、そして世界や地域に貢献するボランティアの人材を育てるセンターを設けている。これらが一体となって進んでいくことを考えている。
早稲田はボランティア精神が伝統的に強い。能登半島地震では日本財団と協力、早稲田出身の珠洲市の市長に困っていることを訊ねた。毛布と水は届いているが、避難所に行っても風呂に入れないと言う。下水道が壊れているため、タンクでお湯を持ってきても風呂の水が流せない。そこで風呂水が98%浄化できるものを提供した。
社会に役立つ理工系の研究が優れている。深刻なのは木造住宅が壊れ、妻子が梁の下敷きになったが助けられないといったケース。道路が寸断されているのでブルドーザーが近寄れない。男が数人がかりで梁を持ち上げようとしても動かない。そういう場合に人型のロボットが役立つ。ロボットの研究は早稲田が1960年代から日本の研究の最先端を進んでいる。ロボットはAI技術で操作する。小型のロボットはそのまま運び、大型は現地で組み立てる。それができる者が早稲田のボランティアセンターにいる。技術とボランティアを組み合わせれば何とかなる。被害状況はドローンで探索して確認する。さらに避難所の介護はロボットが行なう時代だ。その介護ロボットはできている。
宮城県の気仙沼では2011年の東日本大震災以来、ボランティア活動を続けている。今でも早稲田の学生が行くと、地元民が「お帰りなさい」と言ってくれる。中国のハンセン病の患者を助けようと村々を回り、帰国して募金活動を行う卒業生もいる。三菱商事の入社内定が決まっていたが、それを辞退してのボランティア活動だ。ラオスで小学校をつくるといったボランティア活動をしている人もいる。それも人のために貢献するという大隈侯の教えにかなう。
日本列島は地球の温暖化で亜熱帯化しつつある。再生エネルギーなどCO2を減らすといった気候変動問題を解決し自然災害から人命を救うことも早稲田の目指すところだ。
戦争は始まると止められないが、戦争が始まらないようにする研究にも取り組んでいる。ロシアのプーチン大統領はウクライナを攻めて3日で終ると思っていたという。欧米がウクライナを支援することも予想外だっただろう。過去200年の戦争のデータをAIで解析して科学的に戦争の原因を特定し、政策のキーパーソンに提示すれば戦争の防止に役立つ。
偏差値は早稲田が慶応より高くなっている。偏差値教育は正解をいち早く解ける者が優秀というものだが、答えがない問題は解くことができず行き詰まってしまう。コロナ、地球の温暖化、戦争に対してもどうしていいかわからない。社会に出れば答えがない問題にいつも直面する。政経学部の試験は長文の英語と日本語を読ませ、どういう考えをしているか、といったところをみる。スポ―ツ科学部はジャンケンが3種類ではなく4種類だとどうなるか、といったことを考えてもらう。答えがないというようなことに早稲田は取り組み、日本の社会を変える。
慶応の塾長と交流しているが、慶応の学生はなぜ愛校心が強いか訊ねた。新入生に『福翁自伝』を無償で配り、愛校心の育成に役立てていると応えた。そのせいだとわかり直ぐに早稲田も『大隈重信と早稲田大学』を出版、2022年4月から無償で提供、早稲田の良さと大隈侯の偉さを伝えている。
地方の学生が少なくなっているので増やそうと努めている。一都三県の学生が昨年は73%、今年は68%となり、5%減った。
スポーツには2億円しか出していない。今年は5千万円増やす。監督・コーチは手弁当だが、来年も5千万円増やし少しでも謝礼を出したい。寄付は選手の奨学金として使う。卒業生は60万人いるが、そのうちの6万人が1人1万円の寄付をすれば6億円になる。
そうして人類社会に貢献しようと思うならば最も効果的な教育を受けられるという大学にする。
田中総長はパワーポイントを使い説明したが、プロジェクターには「早稲田大学応援基金」として「学生が輝く早稲田の未来へ!」、そして「あなたの1万円が早稲田を変える」と映り、寄付を呼びかけた。
第三部 音楽サークル・コンサート
第三部は午後2時40分、国分寺稲門会の副会長、大橋忠弘さんが総合司会者となり、男22名、女15名、合わせて37名の学生たちが壇上に登場すると紹介して始まった。まず早大グリークラブのコンサート。
グリークラブの司会者がグリークラブは合唱曲だけでなく歌謡曲、民謡などもレパートリーと述べ、「輝く太陽」から歌い出した。続いて応援歌の「早稲田健児」、アニメ映画の主題歌「宇宙戦艦ヤマト」、黒人霊歌の「Ride the chariot」、酒をほめたたえる歌「酒頌」、「斎太郎節」。「斎太郎節」は宮城県の民謡だが、グリークラブの愛唱歌と司会者が言った。最後が合唱曲、「遥かな友に」でグリークラブの1951年の合宿でつくられたという。OBのボニージャックスが歌って広く知られた歌だ。
10分の休憩後、マンドリン楽部が演奏した。司会の大橋さんはマンドリン楽部稲友会の会長でマンドリン楽部は今年が創立111年目になるなどと長い歴史を誇った。部員は約70名だが、当日の演奏者は16名と言い、指揮者を紹介した後、1曲目がパリオリンピックに因み「オー・シャンゼリゼ」となった。その後、東北の地震被災地でも演奏した「パプリカ」、NHKの朝ドラでリバイバルした「東京ブギウギ」の2曲が続いた。そこで大橋さんは楽器を紹介するタイムをとった。マンドリンの他にマンドラ、マンドロンチェロ、マンドローネ、クラシックギターでそれぞれの特徴を説明した。
演奏に戻り「翼をください」、続いてマンドリン楽部の幹事長が挨拶し、最後は美空ひばりの「川の流れのように」と言って演奏を終えた。
フィナーレはグリークラブ、マンドリン楽部に応援部が加わり、「紺碧の空」、「早稲田の栄光」を合唱した。三多摩支部大会に参加した稲門会員も加わった。
第四部 懇親会
午後4時前、会場を移して懇親会となった。司会は鈴木良明三多摩支部副事務局長。須永俊夫三多摩支部副支部長が開会の挨拶、続いて来賓の松尾亜弓早稲田大学常任幹事、石塚順子稲門祭企画広報本部長が挨拶した。総長室長を兼ねている松尾さんは永年、東大和市に住んでおり、「東大和の稲門会に入る」と言って雰囲気を盛り上げた。
テーブルには乾杯用のビールが並んでいる。その後、吉田誠男東京都23区支部長が乾杯の発声をし、懇談の輪を広げた。
田中総長も懇親会に出席したが、総長と懇談しようという会員がひっきりなし。総長は一人ひとり丁寧に対応していた。
午後5時過ぎ、応援部員、チアガールのパフォーマンスとともに校歌「都の西北」を合唱。又木淳一三多摩支部副支部長が閉会の辞を述べて午後5時半に無事終了した。
(川面 忠男 記)