2010.09(第115回) 権現山
権現山は中央本線の車窓から探し出すのはなかなか難しい。北側に沿って続く扇山、百蔵山の山並みに遮られているためだ。標高1300mを越える山は、この辺りには他にないのだが、奥まっているせいか訪れる登山客も稀になっている。
今日のメンバーは川俣さん・宇田川さん・上杉さん・山岸さん・金子さん・長張の6名である。宇田川さんとは上野原駅で落ち合い、8時28分発のバスに乗り合わせた。今年の夏は呆れるほどの猛暑が続き、少々夏バテ気味であるのは私だけではないようだ。
バスの乗客は上野原駅で乗車した男女の高校生を次々に降ろした後は、狭い道で対向車をうまく交わしながら、30分ほどで初戸(はと)バス停に着いた。我々と一緒に3人の女性グループが同じ権現山を目指し降車した。
長閑なバス停前の田舎の集落を案内版に従って進んで行くうちに樹木の茂る山道となる。山道は植林された檜林が頂上付近まで続き、かなり急峻な山道である。今日のコースは累積標高差が1006mとなり、会では中級コースとなるそうである。
薄暗い檜の山道も高度を増してきた。ヤマジノホトトギス、アキノキリンソウ、シラヤマギク、オクモミジハグマがあちこちに咲きほこっており、秋の気配を感じさせる。
ツルニンジン(ジイソブ)の蕾を川俣さんが見つけた。辺りを探して見ると、多く実になったものの中にシュロソウに絡んだ花の見どころのものが一輪残っていた。ジイソブもシュロソウも花を見るのはラッキーといえる。写真を撮り早々に登山開始、苦しい急峻を登ると11時10分過ぎに雨降(あふり)山に辿り着いた。
頂上は平坦で樹木に覆われて視界はきかなかった。権現山から続く尾根筋に続く高台に大きなアンテナの鉄塔が立っている。湿った所が好きなツリフネソウが尾根伝いに群生していた。
雨降山から比較的に平坦な尾根道となる。ここは快適な広葉樹林で覆われている。山頂間近にある大ムレ権現の社殿は、自然の岩を削った急な階段を登った場所に建っていた。日本武尊を祀る社と立て札にある。ここで始めて1人の登山者に出会った。社殿の裏側を一気に登るのがルートのようであるが、社殿左側の方向にも山道が続き、山腹を廻り西側からの上り口に入りそこから頂上に辿り着いた。
最後の急峻は苦しかったが、正午少し前に頂上に立つことができた。この山頂も樹木に覆われていたが、北側は切り開かれ裾野を広げた三頭山の全容が視界に入る。また、三頭山を基点とする笹尾根は、高低差のないまま裾を東に延ばしていた。三頭山は何処からも見られるが、この位置からの眺めは格別である。山頂の平らな所は広くはないが、我々だけの食事には充分な広さであった。食事の終わるころバスに同乗した3人の女性グループが到着し、食事の場所を譲った。3人のグループは山とは関係の無い話題が延々と続いている。
帰りのバスの時間には充分の余裕があるが、次々に男性が到着し、山頂を彼らに譲ることになった。出合った登山者は5・6名であったが、云われるように人の訪れの少ない静かな山である。
和見分岐まで往路のなだらかな尾根道をゆっくり下る。小1時間の快適な山道である。分岐からは急峻を下る。樹木の切れ目から隣の扇山の姿が一瞬見える。
和見峠で広い林道に出た。和見入口バス停まで単調な林道を1時間半ほど下り、漸くバス停に到着した。40分程バスを待ち、4時30分発の上野原駅行きのバスに乗り込んだ。我々以外の乗客はいない。20号線の上野原駅へのT字路でバスを降り、山岸さんの知り合いである和菓子屋に寄り、各自家への土産を購入した。同店で紹介された近くの料理屋に入り、今日一日の山旅の成果を語り合った。まだ暑さが残る山歩きは喉の渇きも一層強く感じ、ビールの味は格別のものとなった。 長張 記