第142回俳句同好会
多摩稲門会のサークル「俳句同好会」の第142回目の句会が10月17日午後、多摩市関戸の公民館和室で開かれ、メンバーの10人が揃って参加、5句ずつ投句と選句を行った。兼題は「秋深し」と「木の実」。当日は秋晴れ、残暑感が和らぎ、季語と季節感が合う俳句を鑑賞できた。
合評では選ばれた句も推敲した。1例が〈明日香路の釣瓶落としや秋深し〉という俳句。「〈釣瓶落とし〉と〈秋深し〉が即き過ぎ」という評に加え、〈釣瓶落とし〉も秋の季語と指摘された。それで〈秋深し〉を〈道遠し〉と直した。
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選句結果は以下の通り。カッコ内は選句者名(特選は◎で表記)。
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秋更くや二度とは行かぬ地図残し―――宮地麗子(川俣◎、澤本◎、辻野)
天高し庭に向きたる亡夫の椅子――澤本登代子(辻野◎、富山、又木、松井)
宝物見するよ小さき手の木の実―――松井秋尚(長張◎、川面、白井、宮地)
秋深し遠野の噺佳境なる―――川俣あけみ(川面◎、又木、宮地)
膝に置く句帳を跳ぬる木の実かな―――川俣あけみ(又木◎、川面、辻野)
四阿の無為のひととき秋深し―――川面忠男(松井◎、川俣)
そぞろ寒医師の見つむる吾のカルテ―――澤本登代子(富山◎)
明日香路の釣瓶落としや道遠し―――川面忠男(宮地◎)
研ぐ音の弾むごとくに今年米 澤本登代子(川俣、富山、長張、又木、宮地)
ほうきの手止めて集むる秋の声―――宮地麗子(澤本、辻野、長張)
電話切る音無きままの秋の雨―――宮地麗子(澤本、松井)
園児去り木の実の並ぶ石の上―――澤本登代子(川面、長張)
行く秋の隣家を出づる喪服かな―――川俣あけみ(富山、宮地)
親の仇討つごと抜きぬ藪からし―――辻野多都子(川面、長張)
木の実降る飛礫のごとく背にふる―――辻野多都子(又木)
籠に盛る豊饒なべて秋野菜―――辻野多都子(白井)
小津映画のやうなる父母や秋深し―――又木淳一(澤本)
問診票チェックする妻秋深し―――松井秋尚(白井)
一カ所にまとまり木の実降り続く―――長張紘一(白井)
聞き流す妻の話に秋の風―――長張紘一(松井)
大文字の右払ひの辺草紅葉―――川俣あけみ(辻野)
藤は実に大屋根リング惜しみけり―――又木淳一(川俣)
診断の数値気になる新走―――長張紘一(松井)
紅白の曼殊沙華咲く妣の庭―――辻野多都子(澤本)
川べりの落ちたる木の実洗ひけり―――川面忠男(白井)
ミャクミャクの尻尾ほのかに菊人形―――又木淳一(富山)
(文責・川面)