文化フォーラムの報告:「多摩市政この1年とこれからの課題」
去る3月31日(土)、京王クラブにおいて、第44回の文化フォーラムが行われました。
講師は遠藤ちひろ多摩市議会議員、要旨は次のとおりです。
議員になって驚いたこと
議員は一般質問を事前に通告し、それを議会で読み上げないと発言は議事録に反映されない。持ち時間30分の中で10分ほど読み上げ、答弁が30分として1分当たりの運営コストは2万円、1時間で120万円になる計算。一般質問の読み上げというセレモニーをみても、コスト意識がない。
パソコンの使用が本会議、委員会では禁止されている。神聖な議場になじまないといったことが理由だが、よく聞けばパソコンを使えない議員が使用を認めないと言っている。これは委員会では認めようと少しずつ変っている。政治にはおかしなことを変えていく力がある。
全会一致で決まらないと継続審議になる。再び審議されるのは3ヶ月後。この時間の流れは、民間経営では考えられない。
多摩市が一年間に使う紙の量は、積み上げれば700mになり、スカイツリーを上回る。何事も文書主義だ。
言葉に鈍感な議会
「傍聴人入り口」と大きな紙に書いてあることに違和感をおぼえた。市の職員は「説明員」、あるいは「補助員」、お招きする人は「参考人」、「資料請求」は、「資料要求」と言う。
行政の困った傾向
何事も他市と比較する。多摩の26都市ではこうなっていると説明し、前例のないことはやらない。他市がやっていないことを初めてやるのは嫌がる。
多摩市の予算500億円のうち300億円は市の税収で、残り200億円は国や都から出るお金。多摩市の税収300億円の使い道は厳しく査定するが、国や都から入るお金の使い方には甘い。
職員は情報を出さず、聞かれなければ答えない。ピンポイントで聞けば資料を出す。性質別経費の「変遷」と言って訊ねると、「そういうものはない」と応えるが、性質別経費の「推移」と言えば、「あります」と資料を出してくる。自分たちに都合のわるい資料については特にその傾向が強い。
給食センターを民営化しようというのは渡辺前市長の方針だった。市教育委員会は、民営化すれば、おいしくなるとか、コストが安くなるとか、もっともらしい理屈を並べる。阿部市長に代わって支持基盤の事情があり給食センターを民営化しないことになった。こんどはコストが高くなるなどと反対の理屈を並べる。どちらも、ちゃんと数字で説明されるが、どちらを信用してよいかわからない。行政は数字を何とでもできる力を持っている。
多摩市は正規職員が800名、非常勤800名で予算が500億円だが、経営感覚はない。収入を増やす発想がない。お金は毎年徴税で300億円、国や都から、200億円入ってくるから、分配する発想しかない。
市政と議会のこれから
財政は現在はよいが、このままでは4年後に74億円の赤字になる。公共施設の改修、ニューータウンの橋のメンテナンスなどに莫大なお金がかかる。パルテノン多摩には毎年5億円、総合福祉センター2億円、ヴィータは7,8階を買ってしまい、毎年何億円と支払い、払い終る頃には改修しなければならない。平成24年度から改革に乗り出そうと市議会、多摩市とも共通している。これら施設とベルブ永山、各地にあるコミュニティーセンター、集会所の再配置に取り組む。多摩市を美しくしている緑にも年間3億円から5億円かかっている。
退路を絶った財政改革を進めなければならないが、これからヒアリングいていけば、各論で反対の嵐が起きるのは必至だ。人件費をはじめ支出に占める固定費の比率が高い。補助金も多く、それは既得権だ。しかし、いったん各論は置いておいてほしい。このままでは多摩市の財政がつぶれる。
財政改革が必要であることは全国の自治体に共通しているが、多摩市が全国の自治体に率先し、厳しい痛みを伴った改革に乗り出す。
マニュフエストの進捗と見直し
人件費の軽減策は、議員が5%、職員が3%、市長が20%、副市長が12%カットすることになり議会で可決した。
多摩市の人件費が高かったのは、職員の年齢構成の平均が40歳代と年収が高い層が多かったためだが、毎年20名程度退職し、代わりに若い人が入ってくるので、総額は抑制されてゆく。従来でたらめな給与体系もつくってきた。お手盛りだが、これは改めてゆく。
待機児童対策は1歳児を入れる施設がないのが問題だ。1歳、2歳に特化した施設の整備や保育ママを活用することも考えていい。
給食費無料化を主張したが、これは撤回する。給食費は応益負担であり、税金は投入されていない。
ニュータウンの再生は諏訪二丁目の立て替えを成功させなければならない。多摩は東京でもいちばん地盤が固いという調査結果が出て、追い風になっている。液状化の心配がない多摩にスポットがあたっている。二丁目の再生が成功するかしないかは今後の試金石となっており、多摩市としても応援しなければならない。(文責・川面)