2010.03(第112回) 鍋割山
鍋割山は丹沢山地の南部にある富士の絶景スポットである。1月例会の金時山から富士は厚い雲に覆われて望めなかったが、今日はどうであろうか。今夜は低気圧が発達し全国的に強い風となる予報であるが、昼間は穏やかな天気が持ちそうである。金時山と同じ早朝の電車であったが、二つき前はまだ薄暗い中に家を出た。彼岸を過ぎる頃から陽が日に日に長くなってくるのが感じられる。暖かくなってきたと言っても今朝はまだ寒さを感じる。
今日のメンバーは今回初参加の上杉雅好さん・川俣さん・山岸さん。金子さん・長張の5人である。小田急渋沢駅からバスに乗り、8時半に大倉バス停に到着した。
大倉から1時間40分ほど単調な林道をも登って行くと二俣に着いた。二俣は広い河原が広がる場所である。両岸は鬱蒼としたフサザクラが一面覆っている。冬の枯れ枝の先にどれも小さな赤い花を付け全体が赤っぽくなっている。
二俣から登山道になる。40分ほど急坂を一気に登ると樹木の梢越しに尾根筋が見えて、やがて後沢乗越に辿り着いた。道は急坂だが良く整備されており大変歩き易かった。
後沢乗越は両側が深い崖で切り立っていた。ここから尾根道を登る。申し分ないほどの天気に恵まれている。冷たい風もあり熱くなった体を程よく冷やしてくれる。尾根道も大変明るく整備され歩き易い。コナラ等の低地の落葉樹から、ヤシャブシ・ハンノキやブナに変わってきた。芽吹きの時期にはまだ早く、下草もない地面まで明るい日差しが届く緑の全くない山道のハイキングも希少な体験である。
今日は川俣さんの何時ものお喋りが聞かれない。花粉症が喉を侵し終始マスクを着用しそれどころではないようだ。
山頂には丁度12時に到着した。大勢の先着の人たちで賑わっていた。山頂は広く山小屋が一軒立っていた。ソーラー施設も施されている。植物保護する箇所は柵が敷かれている。大勢の客が芝生の上で食事をとっている。空いている平坦な面はほとんど鹿の糞だらけであった。それでも何とか糞の無い場所を選び一同腰を下ろし昼食をとる。風も穏やかになり、日差しもありゆっくり食事をすることができた。
天気は良いのだが、富士の絶景はなかった。北側の丹沢の主陵は確認できたが、望めるはずの眼下の相模湾や江ノ島も、白い春霞で覆われていた。頂上近くに鹿ものんびり草を食んでいる。人が近づいても遠くには逃げない。
珍しく頂上で1時間ものんびりしてしまった。予定していた大丸・金冷ノ頭・花立の下山コースを変えた。小丸から二俣に直接下るコースに変更したため時間の余裕もできたのである。多くの登山客を残し1時に下山に入った。小丸までは尾根道はブナの大木が続いている。小丸は鍋割山より標高は少し高い。1341mの今日の最高地点である。少し尾根を下りそこから右に折れ、赤松林を抜け植林されたヒノキ・スギ林の中を下って行く、当初予定されていた天神平の尾根道が東側に続いている。
3時に二俣の朝通過した林道に辿り着いた。そこから同じコースを大倉バス停まで長い林道を下って行くことになる。
二俣の沢にあるフサザクラを再び見る事ができた。手の届く枝を引き寄せると、房状の赤い雄しべが細かく観察できた。これが全体を赤っぽい景色にしている。また、所々に黄色の花をつけているダンコウバイの樹も花の見頃の時期に当たった。
地面にはヤマルリソウが群生している。大倉バス停までの林道はこれら以外の草花は見られなかった。4時少し過ぎにバス停に着いた。丹沢は人気のあるハイキングコースであり、ここも比較的多い客で満ちていた。
永山駅に戻り「旬菜」は予約で満席、階下の居酒屋のビールで喉を潤すことができた。気候も暖かくなり、ペットボトルを余計に持っていったが丁度よかった。久しぶりに新しいメンバーを迎えることができた。遅れていた記念誌も製本中で今月中に配布できる状況となった。 長張 記
追記 二股から急坂を上っているとき、黒い細かな塵のようなものが降ってきた。かすかにものの焦げる匂いもする。下で焚火でもと思って気にしないで登高を続け、後沢乗越に到った。そこで、絵を描いている人が居て、「カンバスに灰が降ってきている、下で焚き火でもしていた?」と尋ねた。「気がつかなかったが、確かに匂った」と答えると「山火事かもしれない」という。一寸した恐怖心に駆られた。山頂までの急峻を一気に上った。
カヤトの広がる山頂でのランチタイムで、すっかりそのことを忘れてしまった。帰宅し、TVで「東富士の野焼きで被害者」とのニュースを知り、このことだと思った。 地図を見ると、案外近い。富士山麓の野焼きの煙を丹沢で体感した次第。金子