2009.06(第104回) 三つ峠
富士山の周りを大きく取巻く、阿蘇の外輪山のような山なみに三つ峠は位置する。富士との間には遮るものはない。空気が澄んでいれば富士は眼前に手に取るように聳えているはずである。マップで見ると、そう期待できるのだが梅雨の時期の天気が期待できるかどうか心配ではあった。昨年の6月の山歩きは雨模様で中止となってしまった。
三つ峠は開運山・御巣鷹山・木無山の頂上の総称であるが、何故、峠と呼ぶのか解らない。
中央線直通で9時半過ぎ河口湖駅に到着。宇田川さんが駅で待っていてくれた。
今日のメンバーは、川面さん・宇田川さん・柴田さん・金子さん・長張である。
宇田川さんの参加は久しぶりで、私の記憶では、3年前の西丹沢の尾根道で、ヒルの大軍に襲われて以来ではないか。あの気色の悪い椿事に一同騒然とし、全速で山道を駆け下りた事を思い出す。それ以来、ヒルで懲りてしまわれたと思っていた。住まいを多摩市から山中湖畔に移して間もないが、今日は、場所が近場という事で久々の参加であった。
宇田川夫人の運転の車・バスと分乗して三つ峠登山口まで、そこから徒歩開始である。
車道はしばらく続き、路肩のすき間や空き地に多くの車の駐車が見られた。今の時間では駐車場所を確保するのは難しそうである。舗装された道は直に終わり、山道となるが意外と幅広い道が続いている。急坂もなだらかになり尾根筋にでる。山荘ロッジをやり過ごし砂混じりの最後の急坂を登りきると三つ峠頂上に到着した。そこで昼食となった。
期待していた山頂からの展望はなく、目の先の富士の姿は全く見えなかった。
梅雨の時期では無理なのであろう。山頂の真下は岩場が続き、ロッククライミングを楽しんでいる男女の姿が間近に見ることができた。東京近郊の数少ない手ごろな練習場として賑わっていた。
下山は上りと同様に、ハルゼミの騒がしい鳴き声を聞きながら、我々は黙々と下って行く。
股のぞきという場所から、富士の頂の一部をみることができた。色々な場所で見た姿の中でここからの頂は最大なものであった。空気の澄んだ日は格別なものであろう。テンニンソウ・ヤグルマソウ・トリアシショウマなどは、いずれも御正体山でも多く見られたが、マイヅルソウやミヤマカラマツ・モミジカラマツ・オオバユキザサなどの花は始めて見る野草であった。三つ峠には800種の野草があると案内板に掲示されていた。山梨県の自然記念物20余種のうち、18種の高山植物が三つ峠に存在するそうである。
昼間は30度と蒸し暑くなるとの予報であったが、山の中の空気はカッラとした涼しさが漂っていた。山頂から2時間弱で達磨石に到着。山道は舗装された道に変わった。ここからもただひたすら下って行く。
直ぐに憩いの森公園に入る。渓流を所々ダムでせき止め、全体を公園にしている。大掛かりな土木作業を伴った細長い公園は、人があまり訪れているようには思えなかった。赤松林の中の道も公園内のようである。
下山の後のビールがチラチラと頭をよぎってくるような、うんざりするほどの長い単調な下りであった。人家が多くなり街に着くと早速店探しが始まった。適当な店がなく駅前の質素なうどん食堂に入り、冷やしうどんをつまみに缶ビールで乾杯した。宇田川さんは富士外周の山々の幾つかを山歩きの候補として紹介されていた。駅で上下の電車に我々と分かれ、それぞれ帰途に着いた。 長張 記