2008.03(第 93回) 茅ヶ岳
茅ガ岳は1700m程のさほど高い山ではない。深田久弥はこの山頂の展望を目前にして倒れ、そのまま亡くなり有名な山となった。この山を101名山と呼ぶ人もいるようだ。特急「あずさ」を韮崎に下りたのは9時半過ぎ、今日はリーダーの金子さん・川面さん・伊藤さん・山岸さん・柴田さん・長張の6名である。予報通り前日から早朝にかけてかなりの雨量があった。久しぶりのお湿りだが、その後の好天は一斉に花粉が飛び散り悩ませてくれるのが常である。韮崎駅ホームから、雲ひとつない八ヶ岳連峰が望まれ、同時に今日の対象の茅ガ岳を目前にすることができる。茅ガ岳の山々は雪こそかぶってないが、山容が酷似していることから「にせ八ツ」と言われる理由も分かる。韮崎駅から深田記念公園までタクシーで上る。公園に佇む記念碑には、「百の頂に百の喜びあり」と彼の言葉が、磨かれた石碑に刻まれていた。
そこから緩やかな広い林道を上ってゆく。アカマツやコナラ等の林の中を1時間ほど進むと間もなく巨大な岩が立ちふさがり、岩の間から清水が流れている。
女岩と呼ばれる岩だ。しばしの休憩をとり清水で口を潤す。女岩を右側に捲きながら崖の上へ出ると本格的な登山道に入る。
かなりの急坂をしばらく進むと尾根筋に出た。北側が開かれ空の下に金峰山の山容が突然迫っていた。深田久弥の終焉の碑がそこにあった。
山頂には予定通り12時少し過ぎに着いた。ゆったりとした頂は、360度の大展望であった。遠くに北や中央のアルプス連山や、そして南アルプス連山が、間近に見渡せる一級のパノラマである。
鳳凰三山の連山の背後に、北岳・仙丈・右端の甲斐駒ガ岳の雄姿は抜群であった。北岳から90度左は富士山方面。右側は八ヶ岳であるが、茅ガ岳の双耳峰の金ガ岳が一部を隠している。更に右に金峰山など奥秩父の山並みが続く大パノラマを満喫する。山頂で昼食を始めた時は、われわれメンバーだけで独占することができた。腰を下ろして食べる時を惜しみ、立食で歩き回りながら全方向の眺めに感動し楽しんだ。
茅が岳から直ぐ隣に聳えている金ガ岳へは、先ず下ってから上るコースである。茅ガ岳下山は北斜面で雪が残り、凍結もあり皆慎重に下る。上りは南斜面で雪は無かった。石門をくぐりの金ガ岳の頂上に着く。期待した八ヶ岳の全景は樹木の間からしか見ることができない。開かれた部分は先ほどの茅ガ岳、その向こうに富士山の方向だけてであった。
ここからは茅が岳を大きく回りながら下るコースが続く。爆裂火口跡からの八ヶ岳の全容は雄大である。
明野ふれあいの里からタクシーで韮崎駅に戻り、「あずさ」特急で八王子駅に出てビールで乾杯。滅多に見られない大パノラマの機会に感謝。深田久弥の詩に「空の茜を顧みて、一つの山を終えりけり、何の俘(とりこ)のわが心、早も急(せ)かる次の旅」。色紙に書いた四行詩には最初「山」が三つもあり、妻志げ子の指摘でその中二つを「空」と「旅」に直され、文学碑の陶板になったそうだ。山好きのわれわれには理解できる詩である。 長張 記