2008.05(特別企画) 武甲山
秩父盆地の表玄関に聳える武甲山は、山肌を大きく削られ山の姿を一変させてしまった。江戸時代から漆喰原料、明治以降もセメント原料として平成に入った今でも石灰岩採掘は続き山肌が削られているためだ。削られた岩肌は頂上にまでおよび、標高は数十mも低くなったそうである。秩父駅からの眺めは急勾配の斜面が痛々しくも見える反面、荒々しく力強い風格をも感じさせる。奥多摩の山から望む武甲山は、頂しか見ることができない。多摩市から比較的近い山であるにもかかわらず、今日まで登るチャンスに恵まれなかった。登山口までのアクセスが悪いためだが、訪れてみたい山の一つでもあった。
八高線東飯能駅で西武線に乗り換え、終点秩父駅に9時過ぎに着いた。駅広場からは、猛々しく構えた武甲山が見渡せる。さすが秩父盆地のシンボルである。頂は霞んでいた。
タクシーで横瀬駅まで戻りそのまま生川の登山口まで、そこは武甲山の秩父駅側の反対側である。こちら側は岩肌が剥き出す荒々しい姿はなく静かな山の姿であった。
今日のメンバーは金子さん・川面さん・橋本さん・長張の4人となった。本来の第3土曜日は、高尾山の清掃登山を控えている等の理由により中止となった。山岸さんや川俣さんから苦情がでたが、前日に決行する事になった。二人は翌日同じコースを行かれたようである。登山口から一気に標高差800mを上る。途中不動の滝・杉の大木・植林された登山道がつづく。
登山口の一丁目から山頂の五十二丁目まで丁目石が置かれている。樹木の緑も芽吹きだし眺望が遮られる時期になってきた。
一気に上り昼までに山頂に着く事ができた。登山には寒からず暑からずの絶好の季節であり、快適に頂上まで登る事ができた。
山頂近くになると登山道の両側は鉄柵で囲まれている。その囲いは頂上部分の広場を一周している。北側は断崖絶壁で秩父の市街が霞を通して見渡せる。南側も急斜面ではあるが何故か鉄柵で遮られていた。少し前に訪れた羊山公園の芝桜の絨毯模様は、眼下の霞のせいか消えていた。頂には一組の老夫婦が食事をしていた。我々もここで昼食をとる。
山頂直ぐ下には御嶽神社があり、半月前にここで山開きの儀式が行われた。新緑の中の境内にはニリンソウが咲き誇っている。多摩丘陵より1ヶ月以上遅れているようだ。ウグイスカグラの花も今が盛りでこれも遅れている。登山口近くにオドリコソウ・ラショウモンカズラ・ヒメレンゲ・チャルメルソウ・ミツバコンロウソウ・クワガタソウ等の花が咲き誇っていた。高尾山周辺の植生と似ているが、山に入らなければ見ることのできない植物ばかりである。石灰岩地帯の特有の植物があるようだが、見あたらなかった。
山頂からは西の方向にひたすら下るだけの静粛な路が続く。途中のカラマツの林は、高尾近辺にはない雰囲気であった。急坂をひたすら更に下ると沢に出る。丸太の橋と云う場所のようだが、透き通る豊富な水が岩肌をなめ、いくつもの小さな滝となって流れている。秩父の絶景を見入る事ができた。ハイキングコースは良く整備され歩き易く快適であった。
西武浦山口駅には予定より早く着いた。ひと電車早く御花畑まで2駅、西武秩父駅から3時過ぎの電車で帰途についた。八王子駅前での旨いビールを飲むには丁度良い時間となっている。 長張 記