春の花咲く道歩き
今日から3月、昨日と打って変わって風の強い日となりました。昨日は好天に恵まれ、多摩稲門会の仲間と高尾山麓を歩きました。梅見が目的でしたが、まだ10日ぐらい早かったようで咲いていませんでした。それでも1万数千歩の散策となりました。その雑感をおとどけします。川面
2月も終わりの28日、多摩稲門会「山歩き」サークルはBコースとして高尾山麓の梅郷を散策した。午前10時、JR高尾駅北口に集合したのは世話役の金子さんと長張さん、それに櫻井さん、橋本さん、浅井さん、わたし川面の6人。小仏行きのバスに乗り、手前の大下(おおしも)で降りた。バス停からJRのガード下をくぐり「木下沢梅園」に向かった。斜面に1万本の梅の木、さぞ壮観な梅見になると期待したが、例年なら咲いている筈であるのに裸木が林立しているだけであった。
バス道は高尾駅から西に向かう旧甲州街道、昔は小仏峠を越えて江戸と甲府を往来した道である。木下沢梅園からバス道まで戻り、東に向かってぶらぶらと歩いた。そのまま進めば、現在の甲州街道である国道20号線に出る道である。
高尾山系から流れる日影沢の沢まで下りた。世話役の長張さんは何かを探していたようだが、期待外れであったようだ。水がぬるみ、日の光にきらめいているだけである。
沢まで下りた際は木道を歩いたが、沢からの上がりには木道に戻らなかった。わずかばかりの上り下りだが、山歩きの感覚を楽しみながら上の道に戻った。
木下沢梅園で梅見ができないとわかった時、金子さんが「影信山に上りませんか」と提案した。当日は山登りのAコースではなく、低山ないしは街歩きのBコースなのでで、登山靴ではなくスニーカーを履いて来た人もいた。それで影信山に上る話しはその場で立ち消えになった。
日影沢はその先で小仏川となる。川沿いに歩いた。バス停の日影沢、裏高尾とバスで来た道を戻る。途中で左側に石垣があり、隙間にスミレが咲いていた。「俳句では春の季語?」と長張さんに問われ、「そうだ」と応えた。長張さんは一日一句を心がけていたが、稲門会の幹事長になって以来多忙でままにならないようだ。
「あら、仏の座があるわ」。櫻井さんの声に応じて長張さんが「せり、なずな、こぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」と春の七草の名を口にした。春の七草を言える人は少なくないであろうが、長張さんは仲間から「植物博士」と言われている。
石垣の日溜りに咲いているスミレは薄紫色だが、それよりも濃い紫の小さな花がやはり石垣の隙間に生えている。「これはコスミレ」と長張さんが花の名を教えてくれる。しばらく歩くと、石垣の隙間に青い花があった。「これはツルニチニチソウ」。植物博士は言い淀むことがない。
仏の座、スミレ、コスミレ、ツルニチニチソウは所々でしか見られなかったが、道の随所に犬ふぐりの薄紫色の小さな花が無数に広がっていた。可愛い花であり、ふぐりという名前が似つかわしくない。「古語だからいいようなものね」。櫻井さんの言葉に同感だが、次々回の俳句会は犬ふぐりが兼題になっている。
摺差(するさし)というバス停を過ぎる。「こげさわ、するはしと変った読み方が続くね」。浅井さんの言葉に「まったくだ」と頷いた。摺差には「とうふや」があり、旨い豆腐として知られているという。
蛇滝口のバス停手前で旧甲州街道を離れ、小仏川に沿う高尾梅郷を歩いた。高尾梅郷から青梅の吉野梅郷を連想し、誰からとなく「吉野梅郷はウイルスにやられて梅が咲かないそうだ」と言った。わたしには初耳だが、数年前に高校の同窓生達とハイキングに出かけ、山の斜面に展開する見事な梅林を見ておいてよかったと思った。
高尾梅郷には天神梅園とか遊歩道梅園とかいくつか梅園があるようだ。小仏川を渡り、天満宮という石柱のみが立っていて社が見当たらない場所に来た。昔は社があったのだろう。斜面に梅林が広がっている。そこが天神梅園であろうが、梅はまだ咲いていない。
小仏川は山麓を流れており、渓流感覚を味わえる。平らな小広場に出た。丸太が転がっており、それに腰かけて昼食にしようということになった。橋本さんが紙コップにビールを注いで手渡す。飲み干したあとに長張さんから酒をいただいて入れる。ちびりちびりと飲みながら妻が調えてくれた惣菜をつまむ。「心で見なさい」。櫻井さんの言葉に応じて梅見酒と洒落込んだつもりになった。
気温はぐんぐん上がっている。花粉が飛散しているのであろう、目も鼻もアレルギー症状を起す。
昼食後、再び小仏川を渡り、旧甲州街道に出た。駒木野というバス停付近に「国史跡小仏関址」の石柱が立っている。旧甲州街道は江戸時代までは交通の要衝であり、出女と入鉄砲を厳しくチェックした関所跡である。
関所跡の横は小公園になっており、紅梅白梅が咲いている。木下沢梅園から日影沢、そして駒木野まで道は小仏川の流れとともに緩やかに下っており、標高差もあるであろうが、そればかりではないようだ。日当り、冷たい風が比較的通らないといった理由もあるのだろう。そう考えるのは、標高差があまり変らない天神梅園がまだ開花していないからだ。
新しい立ち寄り場所に気づいた。間もなく新甲州街道に出るという場所に「高尾駒木野庭園」がある。個人から八王子市に寄贈されたもので、昨年4月に一般に開放され、入場無料となっている。
建物は大正時代に建てられた平屋の母屋と昭和初期に増築された二階屋から成る。旧小林病院で、病院は現在隣接の駒木野病院になっている。庭は枯山水、盆栽、池があり、池には緋鯉が泳いでおり回遊しながら見物した。建物に入ると、玄関の先の間に雛壇とつるし雛が飾られている。飲み物の有料サービスがあり、コーヒーを注文して一時の憩いを楽しんだ。
同園を出てから京王線高尾山口駅まで甲州街道を歩いた。同駅から聖蹟桜ヶ丘駅に戻り、駅近くの「笹陣」という店で「お疲れさん会」を楽しんだ。一日是好日となった。